元プロボクサーの経歴を持ち、芸術家や「北斗の拳研究家ジャッカル」として幅広く活躍されている山本さん。それ以外にも地域の美化やボランティアなども熱心にされている。
坊主頭&大柄で一見恐ろしい(失礼!)。しかし、話してみると柔和で穏やか。そんな”不思議な男”、ジャッカル山本さんにお話を聞いた。
インタビュー
山本さんは元プロボクサーだったそうですが、現役時代について教えてください。
はい、まず先に経歴については、アマ10戦5勝5敗・プロ8戦4勝(1KO)4敗。
勝ち敗け半々ですね。
プロボクサーへの経緯は、中学や高校でケンカである程度勝ったことや(負けもしましたが)中学の頃にテレビでボクシングの世界戦を見たこと、漫画「ろくでなしブルース」「神様はサウスポー」、映画「ロッキー」に影響を受けたことです。
僕は非常に真面目な少年だったので自分から喧嘩はしなかったのですが、喧嘩自慢の怖そうな人に時折絡まれてました。
僕はビビってるんで相手は調子に乗ってきます。
でも「真面目に生きてる僕が何でやられなきゃいけいんだ?」ってプライドが一瞬燃え上がり、そのコスモを爆発させて戦っていました。
でも相手の顔を殴れないんです、怖くて。(実は今もです。ボクシングの場合はお互い同意の上なので殴れますが)
ただ、相手はヤンキーと言っても所詮田舎町の不良で格闘技は素人です。自分も素人ですが、幸い体が大きかったのでパワーで相手を倒してました。相手が格闘技経験者だったら多分一瞬でやられてたでしょうね。笑
そしてボクシングを初めて19歳の時にアマの試合で1RKO負け!鼻の骨が陥没し、それ以降怖くてスパーリングが出来なくなりました。
1度ボクシングから離れましたが22歳の時、東京の「角海老宝石ボクシングジム」に入門しました。
トレーナーからは、
「パンチが来ると目をつぶる」
「反射神経が鈍い」
「性格がボクシングに向いてない」
という理由で絶対プロにはなれない、と言われましたが「アマチュアならやれるかも」ということで、プロボクシングのジムでありながらアマチュアの試合に出ていました。
しかし25歳の時に念願のプロテスト合格。これは嬉しかったですね。後楽園ホールで試合もでき幸せでした。
しかし、僕のファンの応援はむちゃくちゃでした。
「今日も負けるのか?」
「チケット代返せよ!」
「派手に倒れろよ!」
「猫パンチ打つな!」
などなど。笑
打たれ弱くパンチ力もなかったので、負ける時はKO敗け、勝つ時は判定でしたが、引退試合ではKOで勝てて嬉しかったです。最高のパンチが決まりました。
現在はどの様な形で格闘技に親しまれていますか?
最近引越しをして環境が変わった事もあり、あまりやれていないのが現状です。身体も鍛えていません。
ボクシングはやりませんが、教えることをしてます。福祉施設で障害を持った子ども達に7年程教えていました。また高齢者や主婦などに、楽しくできるボクシングを教えてます。ボクシングは顔を殴り合いますが、それができない人でも健康や楽しさを味わう安全なボクシングを教えてます。
そして、ブラジリアン柔術です。
まだ白帯ですし、スパーもいつもやられてばかりです。しかし柔術は続けます。怖くて人を殴れない私にとって柔術は護身としても必要なんです。19歳の時、第一回アルティメット大会(現UFC)でグレイシー柔術が優勝した時からずっと注目してた格闘技でもあります。
山本さんは「北斗の拳」の研究家としても活動されています。「北斗の拳」を伝承する理由や魅力を教えてください。
やはり「男の生き方!人の生き方!」を伝えるためにですね。そして、神道、仏教、儒教を基盤とする武士道の精神が「北斗の拳」にあるからです。
敵も最後はいいヤツになって死んでいく、そこに感動があり敵キャラが光り出すんですよね。
アメリカでも「北斗の拳」は大ヒットしハリウッドが映画化しましたが、シンとの戦いの所でシンが悪役のまま死んでいくんです。何の感動もなくつまらない映画でした。
外国人も「日本人が敵をもいいヤツに変える」ことに感動するらしいですが、自分達では表現できないそうです。そこが日本人の魅力です。
海外では戦争で敵を倒すと、相手の王だけでなくほぼ血の薄い親戚まで皆殺しにしたり、、、。しかし、日本は殿様だけ切腹で後は助けたり、、、。
また、太平洋戦争でも海戦で敵の船を倒したら日本軍は救助に行ってたんですね。日本軍と戦った多くの外国人が「日本兵は素晴らしい」と称賛してます。
日本人って優しいんですよ。
和の心!武士道があるんですよ。
それと「北斗の拳」は重なる所が多いんですね。
では私たちが「北斗の拳」から学べることはなんでしょうか?
まさに武士道!和の精神!そして「愛」ですね!
では愛とは何だと思います?
それは「互いに理解し合うこと!」と僕は思います。
人は自分を理解されると満足します。幽霊でもその悲しみを理解してあげると成仏します。北斗の拳の敵が最後はいい顔で死んでいくのも、自分の哀しみをケンシロウが拾ってくれたからですね。
そう、北斗の拳から学べるのはまさに「愛」!
「北斗の拳」から学ぶセミナーや企業研修もされていたとか?
はい、北斗の拳を題材に、日本人としての和の精神がこれからの時代は大切になっていくことを説いてました。
拳王軍や聖帝軍のような縦社会は昭和のモデル、北斗の軍のような横の繋がりがこれから大切になっていくとか、、、
北斗の拳の名セリフ「お前はもう死んでいる!」でもありますが、言葉の後に死という現象が起こるように言葉が先!日本は言霊の国と言われ、言葉にはパワーがあります。部下に「お前はうまくいくぞ!」「君ならできるよ!」など先に誉めていくとそのようになっていきますね。
障害を持った子ども達にボクシング教えてた頃、言うこと聞かなずマナーの悪い子どもも多々いました。でも、「先生の言うこと聞いてくれてありがとう、嬉しいよ」と子ども達に言い続けました。すると、やがて聞いてくれるようになったりとか。
語り出すとキリがないですが、とにかく僕は北斗の拳から多くを学び、今があります。
ちなみにお気に入りのキャラクターは誰ですか?
自分はシュウのような男が好きですね。
でも、目指すほジュウザ!カッコいいです。
しかし、サウザーもカッコいいですね。
ユリア一筋のシンの純粋さにも涙です。
どのキャラも好きですねぇ。
でも、やはり一番はケンシロウかなぁ。
地域貢献や慈善活動もされていますが、どのような活動でしょうか?
主に次のようなことをしています。
- 毎日、地域のゴミ拾いを1時間ほどしてます。
- 月2~3回、地域の神社、公園などの草刈りや整備をしてます。
- 災害時に支援活動へ行きます。今まで宮城、新潟、熊本、和歌山、広島、栃木、長野、岐阜、兵庫、大阪、、、などに行きました。
- 笑いヨガやボクシング講座。高齢者や障害ある方が楽しくできるよう取り組んでます
まあ、趣味でやってるので「世のため人のため」とか高尚な志はないですよ。自分の趣味だから続けれます。自分がした良いことが後から返ってくれば…?という算段の上です。笑
アートや詩など芸術家としての活動も教えてください。
はい、これも趣味ですね。好きでやってます。絵は子供の頃から好きでした。
実は大阪芸術大学に合格したのですが学費が高く断念しました。でも35歳の時、路上詩人として「あなたを見てインスピレーションで詩を描きます」と即興で詩を書くパフォーマンをやり始めました。自分の作品を買ってくれる人がいると嬉しくなってアートへの活力が湧いてきますね。
絵も好きです。店舗の壁に絵や言葉を書く依頼も受けるようになってきました。
最近は海で拾ってきた貝殻や石に絵を描いてます。
最後に山本さんにとって「格闘技」とは何ですか?
「『和』の精神」です。
日本人が大切にしてきた「和」、人を思いやり愛する心、これを維持するには武力も必要です。
治安維持にも武の力は必要です。車を運転していて警察がいたらスピードを落としますよね。極論ですが、それは権力にはその裏付けとして武力があるからこそです。
日本人って戦争はむちゃくちゃ強いんですよね。
戦国時代100年分の戦争がヨーロッパ全土の1000年分の戦争に値するとも言われてます。
日露戦争においては世界最強と恐れられてたバルチック艦隊を日本海軍が倒します。その戦力比はロシア:日本=20:1と言われていましたが、1/20の戦力で完全勝利を納めました。
また、大東亜戦争でも欧米列強に100年以上植民地とされ悲惨な支配を受けていた東南アジアを救いましたね。わずか半年で欧米を追い出しました。このことで東南アジアの多くの国が日本に感謝してます。それができたのは、日本人の武力があったからです。
そして、強いでけではなく負けた相手を救います。これが武士道であり、和の精神と思います。
強いだけでなくその強さを持って平和維持を努める。
仏教においても明王は仏の教えを武力で伝える存在。大日如来の化身が明王です。そこには「たとえ地獄の業火の中でもお前を救い出す!」という深い愛があります。僕は格闘技とはそういうものと思います。格闘家は強く優しく!
繁華街でよく飲み歩いてたので路上や店でケンカを見かけました。多くの人は見て見ぬふりか傍観してます。
でも僕は仲裁に入りますね。怖いですよ、どんな相手か分からないし。こちらは相手を倒す理由がないのに、襲われたら困ります。
一番は争いに巻き込まれず去ることが上策でしょうが、やはり人としては止めないといけません。負けてるほうが大怪我するかもしれないし、勝ってるほうも犯罪者になるかもしれない。そういった時「制する武の力」は必要ですね。
武士が刀で戦い剣術が、刀を失い相手の刀と戦うとこから合気術、相手も刀を失い互いに取っ組み合いとなった時のために柔術が生まれました。柔術は力の加減次第で相手を殺すことも許すこともできます。日本人らしい強さと優しさを兼ね備えた素晴らしい格闘技だと思います。
勿論、他の格闘技もとても素晴らしい。ブルー・スリーが言われたように「すべての格闘技はそれぞれの点において優れている」ですね。どの格闘技もその状況に応じて使い方があり素晴らしいです。
今の日本は平和であり武力は役に立ちません。人を殴れば犯罪です。しかし、良い悪いは別として常に世の中は戦争と平和を繰り返してきました。望みはしませんが、もし戦争がやってきた時は再び武の力が必要となってきます。
武で平和を取り戻す!その時のために、平時には役に立たない格闘技を続けて伝承していくことが、戦乱時になった時のために必要です。
もちろん戦争は避けたいですが「戦う精神!和の精神!」を継承していくことが格闘技をやってる人達の役割とだ思っています。
結論、格闘技とは「『和』の精神」なのです。
インタビュー後記
山本さんが数ヶ月前に海辺に引越しをされた後、砂浜や近所のゴミ拾いをされているのはSNSを拝見して知っていた。当初私は「綺麗な海辺に感化されたクリーン活動なのだろう」と思っていた。
しかしお話を聞くと、元々住んでいた名古屋(池下!)でもずっと近所のゴミ拾いをされていたと聞いて驚いた。正直、私にはできない。
山本さんの活動や含蓄は「どんな経験を重ねてこの境地に辿り着いたのだろう」と思わざるを得ない。若輩の私が言うのも何はあるが、おそらく多くの葛藤を重ねて今に至られたのだろう。
まだ底が見えぬ山本さんの人となりにもっと近くために、私も北斗の拳を読み直すことから始めたいと思う(山本さんはケンシロウを除くと北斗よりもば南斗推しと言うことは分かった笑)。
山本さんのご協力に深く感謝します。