大原道広さんインタビュー「格闘技とは人と人とを繋げてくれるもの」

大原道広さんインタビュー「格闘技とは人と人とを繋げてくれるもの」

実績豊富な黒帯として、また各地の柔術コミュニティへの顔の広さでブラジリアン柔術界の生き字引的存在の大原さん。全盛期は日本中の大会に頻繁に参戦し、時には海外まで転戦されていたらしい。

しかし、「試合の鬼」だった大原さんも、現在では所属するポゴナクラブジムにてスパーリングを中心とした”楽しむ柔術”にシフトされていると聞く。

そんな大原さんにお話を伺った。

インタビュー

大原さんは大型連休では毎日欠かさず練習をする鉄人としても有名ですが、このコロナの状況で柔術ライフはどの様に変化しましたか?

ご多分に漏れず外出自粛ですね。

柔術のスパーリングそのものは好きなのですが、そのためのトレーニング類は日頃から特にやっておりません。連休中は気晴らしにお散歩程度で、あとは家で動画を見たりしてのんびり過ごしております。

これまでの格闘技歴を教えてください。

高校時代にレスリング部。30歳過ぎたくらいからシュートボクシング、修斗、それから柔術ですね。柔術は初めて試合に出たのが2002年9月なので、キャリア18年といったところです。

アマチュア修斗は試合も出ましたが2戦2敗です。2001年、2002年に試合をしているのですが、自分が出た65㎏級では当時のトップアマシューターは日沖発さんでした。もしも試合で当たっていたらと今考えると恐ろしいです…。

埼玉県川口市にあるポゴナクラブジムの初代柔術インストラクターとお聞きしましたが、どのような経緯だったのでしょうか?

2004年に、たまたま見かけたポゴナのホームページで「柔術始めました!!出稽古大歓迎!!」と書いてあったので、行ってみたのがきっかけですね。

もうこれが「運命の始まり」でした。当時、同好会的な感じで総合格闘技の練習をされていたのが平田真実代表と中易俊之さんでした。

それから毎週日曜夜にお邪魔させていただくようになりました。その後「柔術クラスを立ち上げるので指導をして欲しい」とお話をいただき、インストラクターをやらせていただく事になりました。

当時、青帯になったばかり(都内の柔術サークル「R-K@HOLiC」五辺宏明さんから認定)だったので、「自分なんかで良いのかな?」と思いながらクラスをやっていたのを覚えています。

(大原先生!!と呼ばれ)「あ~、僕は専業じゃないんで大原さんと呼んで下さい」

「この技ですか?正直わかりません… 一緒に考えていきましょう」

「あぁ、上手ですね~センスありますよ!!」

今思えば、それが自由度の高いポゴナ柔術のスタイルとなったのかもしれませんね。

平田真実代表が掲げたジムのモットー「みんなで楽しく強くなろう!」は、今なお実現されていると感じます。

− 地元のテレビに紹介されたポゴナクラブジム。創設者の平田さんや後の世界選手権アダルト黒帯4連覇の湯浅麗歌子が高校生当時の試合も(白帯)!

2006年、私はまだ青帯でしたが経験者の金古一朗さん山田悦弘さんが入ってこられたので、お二人が紫帯になったくらいからクラスをやっていただくようになりました。

現在の柔術クラス代表の鈴木広隆さんが入って来たのもこの年でしたね。今では世界レベルで活躍する渡辺翔平さん湯浅麗歌子さんが入会してくるのはその後になります。

− 感慨深い一枚

参考記事
柔術界の奇跡、関東最技巧派集団の秘密を追え!!!・・・ポゴナ・クラブジム訪問パート①
楽しいは強い!!柔術界の奇跡は、楽しさの軌跡!・・・ポゴナ・クラブジム訪問パート②

そのポゴナクラブジム、今では強豪選手を多数排出しています。感慨深いのではないでしょうか?

先ほど名前をあげたような強豪選手達のイメージがあるかと思いますが、大会での団体入賞実績はそう多くはありません。メンバーは主に健康増進のためにやっている方々で構成されています。

ポゴナの柔術メンバーは「関西プロ柔術MATSURI」でもお馴染みの武井昭博さんをはじめ、オヤジ世代の層が厚いですね。

大原さんとスパーをした方は皆「大原地獄に延々と引き摺り込まれて終わる」と言われますが、ご自身の柔術スタイルを教えていただけますか?

思い起こせば白帯・青帯の頃は、試合で一本勝ちをする事もありましたが。しかし段々勝てなくなるにつれて、勝つための手段選びや自分の体力の無さを勘案して「堅実スタイル」になっていきました。

いわゆる「シニアに相応しい動きの少ないスタイル」ですね。

お仕事の関係で転勤が多いそうですが、その間どの様に格闘技に親しまれてきましたか?

ここはもう、話せば長くなってしまうのですが…

2008年から単身赴任生活がスタート。2008〜2010福井、2010〜2018名古屋、2018〜現在が群馬となっております。

福井の時は大賀幹夫先生の紹介で、元ねわざワールド会員の丹下貴礼さんと「ねわざワールド越前」をスタートさせました。現在は福井ブラジリアン柔術クラブと名称変更して、11年を経て今なお続いております。

名古屋の時はALIVEへ入会。当時、吹上道場の近所に住んで一会員として毎日通っていました。

柔術クラスの鈴木陽一社長細川顕さん、そして日沖発さん久米鷹介さんをはじめとするプロMMAのトップ選手達とも練習させていただくなど、今思えば贅沢な時間を過ごさせていただきました。

− 名古屋時代

柔術ではアジア選手権、ヨーロッパ選手権、ワールドマスターなど主要国際大会にも出場されており、いずれも表彰台に登られています。

練習で若い人達には敵いませんが、マスター部門の大会で同世代の方々と勝負出来るのが柔術の大きな特徴ですよね。運もありましたが、海外大会で勝ってメダルを持って帰って来られたのは一生の思い出です。
※アジア選手権金メダル/ヨーロッパ選手権銀メダル/ワールドマスター銅メダル(筆者補足)

− ワールドマスターにて
− ヨーロッパ選手権にて

印象に残る試合はコパ・ブルテリア2012です。

ブルーノ・フラザトという世界的強豪選手の招聘があったのですが、マスター枠で申し込んでいた自分が、手違いでアダルト黒帯のトーナメントに組み込まれてしまいました。

試合は初戦を勝利する事が出来たため、二回戦でブルーノ・フラザト選手と対戦する事が出来ました。秒殺されましたが、自分のキャリアで最も印象に残る試合ではありますね。

− ブルーノ・フラザト戦

ブルーノ・フラザト戦 参考記事
中塚!加古!ブラック・イズ・ビューティフル!!・・・2012コパ・ブルテリア②
【柔術プリースト】# 66:7/8『コパ・ブルテリア2012』大特集!

そういえば、所属ジムのイベントや「関西プロ柔術 MATSURI」での司会などMCが上手な印象があります。

柔術キャリア15年以上くらいの方にしかわからないかもですが、若林番頭(パラエストラ東京)のコールがメチャメチャ好きだったんですよね。MATSURIの時は、ケロちゃん(元新日本プロレスリング田中リングアナ)も意識してます。

特にオリジナルではなく、これまた専業ではないので上手な人のをパクってますね。笑

− MC-MICHI!

MATSURIでは森本猛さん(GROUND CORE)、村上直さん(ストレート柔術)、荒木拓也さん(フルフォース)をはじめとする多くの方々との出会いがあり、これまた貴重な経験をさせていただいております。

柔術やMMA含め影響を受けた選手や注目の選手はいますか?

なんといっても吉岡大さん(World2006銅メダル/2008銀メダル)ですね。練習に関しては、ポゴナ発展の功労者のお一人でもあります。

吉岡さんとは2005年に東京イエローマンズの日曜朝練で出会い、その後2007年からポゴナでも一緒に練習させていただくようになりました。

出会った頃は雑誌に載っている有名選手という存在でしたので、一緒に練習させていただけるだけで光栄という思いでした。

最後に大原さんにとって格闘技とは何ですか?

ずばり「出会い」です!!

自分にとって格闘技とは「人と人とを繋げてくれるもの」です。未だに調子に乗っての失言や、思いやりに欠けた行動で人を傷つけてしまう失敗もありますが、多くの人達との出会いが自分を成長させてくれていると感じております。

今回、ご縁があって「My Fight Style」さんからのインタビューを受けさせていただきましたが、まずは感謝申し上げます。相手から引き出すというその「Style」から学ぶべきものが多々あると感じております。今度また個人的に語りましょう。

そして長いインタビューを見てくださった皆様にお礼を言いたいです。

本当にありがとうございました。柔術をされている方なら、どこかで一緒に練習出来ると良いですね!!

インタビュー後期

大原さんのスタイルを一言で表すと「楽しむ」だと思う。

初心者を格闘技特有の型にはめるのではなく、まずはその人が「楽しむ」所まで優しく導く。そうすれば後は自ずと熱心に練習をするようになる。そのお陰で楽しい格闘技ライフに入れた人も多いはずだ。

長年所属されるポゴナクラブジムは、道場主やインストラクターよりも会員さん達がある程度自由に主体となって活動している珍しいジムである。ご本人も言われているように、創設者の平田さん(牧師さん!)や、大原さん達が作り上げられた空気がそのまま残っているのだろう。会員の皆さんもオープンマインドな方が多い。

そして最後には恐縮にも私にまでお褒めの言葉をいただいた。コロナ収束の暁には、ぜひ埼玉のポゴナクラブジムへお邪魔したいと思う。

大原さんのご協力に深く感謝します。

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