中井祐樹さんインタビュー「格闘技とは人生とイコール、もしくはそうなりうるもの」

中井祐樹さんインタビュー「格闘技とは人生とイコール、もしくはそうなりうるもの」

今回はパラエストラ・ネットワーク筆頭代表であり、日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)の会長である中井祐樹先生にお話を聞いた。

言うまでもなく、中井先生の実績や逸話については様々な書籍やメディアで既に紹介されている。そこで今回は身近な活動についてやパーソナルなことについてお聞きしたいとお願いし、ご快諾をいただいた。

中井先生は私が格闘技に関わる以前から存在を知っており畏怖の念を持っていた方なだけに、今回の機会は感慨深い。

目次

プロフィール

中井 祐樹(なかい ゆうき)
北海道出身/武道/格闘技道場パラエストラ・ネットワーク代表/日本ブラジリアン柔術連盟会長/元日本修斗協会会長
七帝柔道を経てプロ修斗の道へ。1994年には修斗ウェルター級王者を獲得。1995年、伝説のVTJにてジェラルド・ゴルドーとの一戦を経てヒクソン・グレイシーと対戦。この一戦を最後に総合格闘技を引退、以後ブラジリアン柔術の道へ進む。1997年「パラエストラ東京」を設立し強豪格闘家や柔術家を多数排出。現在も指導をする傍、格闘技の啓蒙活動を務める。趣味は読書、映画鑑賞。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E4%BA%95%E7%A5%90%E6%A8%B9

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インタビュー

まず、格闘技界にも大きな影響を及ぼしているコロナ騒動ですがご自身の活動にどの様な影響がありましたか?

2ヶ月に渡る臨時休館、大会・イベントの中止などがありました。

仕事が思うようにはできない状況、それでもオンラインプログラムに出演したり、執筆依頼に応えたり、青空教室実施やクラス改編など普段から考えていることを実践する機会となりました。

コロナ騒動の前まで日本各地でセミナー等を通して柔術の普及活動をされていましたが、狙いや実施されての感想を教えてください。

全国的な普及活動も進み、私が出会ったことのない競技者・愛好者や興味を持ってくれている未経験者の方も増えました。そこでもういっぺんイチからシーンをブラッシュアップしようと思ったのです。それもSNS時代の興隆に合わせて続けてきて、もう10年位になりますでしょうか。

とてもレベルアップしたなと感じる反面、基本が浸透していないなと感じる面も多々感じています。私ができることであれば皆さんにお手伝いしたいなと思います。

まあ、私が練習したいというのもかなりありますが(笑)! 

− 日本全国、大人から子供、アマチュアからプロ、オリンピック選手など指導は多岐に渡る

時に競技の枠を超え柔術をレクチャーされていましたが?

人を介して繋がりができまして、様々な分野の片方と交流させて頂いています。

私の持っているものは「総合武道/格闘技」でありますので、他のジャンルの方を補完できる種のものだと思っています。

正道会館の石井和義館長とも最近久しぶりに再会でき、すぐに本部道場や合宿等で指導する機会をいただきました。やはり何かを修めたり身につけた方は身体の使い方を知っているため、しっかり覚えたら凄いことになるなと改めて感じました。

では日本各地の方々が「うちにも中井先生に来ていただきたい!」と思った場合はどの様にすれば良いでしょうか?

気軽に連絡下されば、といつも願っています。

スケジュールは予定が重ならなければご希望になるべく沿うつもりです。少人数や小さなスペースでも構いませんし熟練者でなくてもまったく問題ありません。

費用はイベント時間によって決まりますが、もし予算に不安があるならば当方の主催イベントにすることもできますので、場所さえ確保していただければ結構です。

ご連絡はSNSのDMでも書き込みでも大歓迎です! 

できればカラオケも一緒に、ですか?笑

いえいえ必須ではありませんよ(笑)。とことん付き合うことも可能ですよ、という心意気ではおります(笑)!

柔術や柔道、サンボ、キック、レスリングなど、個別の競技としてでは無く全て格闘技の中の手段の1つとして捉えておられる気がします。この点いかがでしょうか?

いえ、個々は独自の競技ですね(笑)。

ただ、たとえば私はレスラーでしょうか、柔道家でしょうか?それとも柔術、総合格闘技?

実はどれも私なんですね。自分に落とし込むという意味合いならば、格闘技の枠じたいにさほど大きな意味はないと思うんです。

「サッカーという物はない、サッカーする人がいるだけだ」という言葉に近い感覚ですね。

何を学んでもよく、またどの道に進んでもよい。またどこにでも行けて、また戻ることもいつでもできる。

それが大きな意味での武の道だと考えています。

話は変わりますが、少し前にジェラルド・ゴルドー氏との2ショット写真が出た時は個人的に衝撃的でした。この時の経緯とこの件に関する今の思いを教えてください。

Facebookのメッセンジャーである来日中の外国の方から連絡をいただきまして、お会いしたいとのことでした。その日は夜パラエストラ池袋で指導でしたのでそちらにいらしては、と伝えその運びになりました。

指導前でしたかね、その方が見えて挨拶をしましたらなんか外にお友達がいる様子でしたので中に呼び入れるように言ったのです。そしたらそれがゴルドー氏でした。

メッセージくれた方はゴルドー氏の空手のお弟子さんでして、関西の空手大会に出場した帰り道だったんですね。それでほら、私は誰でも迎え入れますから、そこで久しぶりに話したというわけです。

近況を話したりとても盛り上がりましたよ。遠い昔過ぎますが、とても懐かしく感じました。

− この経緯についてや前後談はこの本に載っている

中井先生はロシア文学がお好きと聞きました。ロシア文学は英雄的享楽的なフランス文学等とは違ってもの悲しく重苦しい印象があるのですが、どの様な所がロシア文学の魅力でしょうか?

独特の温度というか風土を感じ、それが人間への洞察にまで繋がっていると感じるのです。

ゴーゴリ、ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフ等々皆それぞれまったく色合いは違いますが味わい深いです。

 たしかにもの悲しさ、重苦しさはありますね。でも私はオプティミスティックなペシミストでして(笑)、そのテイストが大好きなんです。

筆者註:オプティミスティックなペシミスト=楽天的な悲観主義者、ということだろうか

会長を務められるブラジリアン柔術連盟ではコロナの影響により試合がことごとく白紙となっています。試合を待ち侘びているたくさんの柔術家の皆さんへメッセージをお願いします。

柔術を愛好する皆さんの気持ちはひしひしと感じています。本当に私共としても辛い部分です。

今は自身そしてまわりの方々との時間を大切に柔術を温めていただき、来る再開・再会の日に備えて楽しみにしていて頂きたいです。

最後にシンプルにお願いします。中井先生にとって格闘技とは何ですか?

人生とイコールです。もしくはそうなりうるものですね。

インタビュー後記

以前より中井先生について知り得た情報では、ストイックな練習やシビアな逸話が多く、発言にユーモアは感じるが孤高で近寄りがたい方だと思っていた。しかし実際に接する機会があり、気さくでオープンマインドな方だと言うことが分かった(もしかすると途方もない研鑽や葛藤を経てそうなられたのかもしれないがそこまでは分からない)。

例えば、総合格闘家の日沖発選手が柔術の試合に出た時の事。久しぶりの柔術の試合前で緊張する日沖選手に、やや離れた所におられた中井先生が真面目な顔のまま「肘を使え!」とジェスチャーをしておられた(柔術で肘は反則)。もちろん冗談ではあるが柔術連盟会長のユーモアとしてとても面白かったのを覚えている。

今回のインタビューでは私の浅い見識からくる質問や、一個人としての好奇心にも丁寧に答えていただいた(1つだけ「北海道男」のネーミング拒否エピソードについて聞きそびれたのは心残り…)。

私も常々オープンマインドでありたいと思っているがなかなか難しい。中井先生の言われる武道についての理解はまだまだ不十分かもしれないが、丁寧にご対応いただき人としての姿勢は十分に学ぶことが出来た今回の機会だった。

中井祐樹先生のご協力に深く感謝します!

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