金古一朗さんインタビュー「先を見据えるのなら早い段階からテクニック重視を」

金古一朗さんインタビュー「先を見据えるのなら早い段階からテクニック重視を」

現在は橋本(知之)王朝のブラジリアン柔術ライトフェザー級。2010年代前半を席巻していたのは金古一朗さんだった。

金古一朗さんは手を合わせた相手や教則動画を見た人誰しもが驚く超絶技術で有名なテクニシャンだ。様々な大会で実績を残し、JBJJF(日本ブラジリアン柔術連盟)の初代殿堂入り4人の一人にも選ばれている。

まだ柔術の指導者が少なく、自分たちで研究し紆余曲折しなければならなかった時代からどの様な道を歩み今に至ったか、鋭い眼光の風貌も印象的な金古一朗さんにちょっぴり恐る恐るお話を伺った(実際は神対応でした)。

※記事内の写真はブラジルブログ様MMAPLANET様BJJチャンネル様及び公開されている個人のSNSより引用させて頂いています。ご了承ください。

プロフィール

金古 一朗(かねこ いちろう)
埼玉県さいたま市出身
29歳で柔術を始め34歳で黒帯を取得。35歳で全日本王者、41歳で年齢別の世界王者になる。ギター講師をしながらポゴナ・クラブジムでインストラクターを勤めた後、2015年さいたま市に自身道場「シュラプネル柔術アカデミー」をオープン。テクニカルな柔術及びギターテクニックが有名でテクニックのアウトプットにも精力的に励む。
好きなミュージシャンは「ヌーノ・ベッテンコート」「リッチー・コッツェン」。好きな格闘家 は「長州力」「スタン・ハンセン」「山本KID徳郁」「桜庭和志」。
一見怖い風貌から「マッド金古」との異名があるが「話してみると全然良い人」とは身近な人物談。

SNSアカウント・関連サイト

インタビュー

まず、これまでの格闘歴を教えてください

はい、昔からプロレスが好きで、そこからUFCやK-1、PRIDEにも興味を持ち始めました。実際に格闘技を始めたのは28歳で、最初は格闘技サークルOZ(後に常設格闘技道場となるfreedom@OZの前身となるサークル)で打撃やグラップリングを始めました。

初めは柔術はやっておらず、あまりやる気もなかったのですが、1年位たったある日、なんとなく道衣を着て始めました。いざ始めて見ると段々面白さが分かるようになり、どんどんはまっていきました。

それで本格的に練習したいと思うようになり、通いやすさや人の繋がり等も含めて検討した結果、2006年4月にポゴナ・クラブジムに入会します。

ポゴナに通いだしてからは毎日練習するようになり、実力もぐんぐん伸ばしていけるようになりました。

青帯の頃

主な戦績を教えていただけますか?

アダルトでの成績は、

  • 2014 IBJJF世界柔術選手権 アダルト黒帯ライトフェザー級ベスト8
  • 2012 IBJJFアジア柔術選手権 アダルト黒帯ライトフェザー級優勝
  • JBJJF全日本選手権アダルト 黒帯ライトフェザー級優勝(計4度)

マスターでは、

  • 2016 世界マスター柔術選手権 マスター3黒帯ライトフェザー級優勝

他にもありますが、大きなものはこんな所です。

2016 世界マスター柔術選手権にて(画像引用:ブラジルブログ様)

そのような素晴らしい結果を残され、2016年にはJBJJFの初代殿堂入りメンバーの一人として選出されました

やはり自分がやってきたことが公に認められたということはこの上ない名誉だし、とても嬉しかったですよ。

殿堂入り表彰セレモニーの様子(画像引用:日本ブラジリアン柔術連盟様)

※JBJJF(日本ブラジリアン柔術連盟)殿堂入り選手一覧

選手時代はどの様な練習をされていましたか?

2010年1月に黒帯になりました。当時はそのまま道場を設立したいと思っていたのですが、自分の同期や先輩黒帯が世界選手権に挑んでいく姿に心を打たれ、自分も世界にチャレンジしようと思い、道場設立は延期し更に練習に励むようになりました。

そこからは質、量共に「世界に挑むにふさわしい練習をしなければ」という思いが強くなり様々な練習環境を模索していきます。

それまでの毎日のポゴナでの練習以外に大きく変わったのは2つです。

1つ目はトライフォースさんで平日の昼に開催されているコンペティションクラスへの参加です。そこで、芝本幸司さんや中村大輔さん、当時まだ茶帯だった山田秀之君、大塚博明君や鍵山士門君らと練習するようになりました。同じように世界を目指す彼らと練習することにより、私の実力もどんどん伸びていきました。

トライフォースにて

2つ目は通称「金古練」と言われる練習会でした。ここには渡辺兄弟(翔平・直哉)を始めとするポゴナの若手達に加えて、塚田市太郎さんや川嶋和哉君等も参加してくれました。

練習で大切なのは、みんなが同じ方向を向いて練習することだと思います。本気で強くなりたい人達と、真剣に試合で勝つための練習をしていくことにより、どんどん強くなっていくのを実感しました。

長年勤められたポゴナ・クラブジムのインストラクターにはどの様な経緯で就任されたのでしょうか?

前任の大原さんが転勤になってしまったため、私が後を引き継ぐ形でインストラクターになりました。紫帯の時でした。

技のレクチャーは最初から楽しかったです。元々青帯の頃から将来道場を持ちたいと思っていましたが、インストラクターになることでより一層将来道場を持ちたいと思う気持ちが強くなりました。

ポゴナ時代。左は前任インストラクターの大原道広さん

ライバルや目標にした選手、印象に残っている試合について教えてください

1人は加古拓渡選手です。

2013年のアジア選手権で彼が初めてライトフェザーに階級を落としてから、いつか当たることを想定して準備を続けてきたのですが、なかなか当たる機会がありませんでした。そして本当に最後の最後、私のアダルトカテゴリー最後の試合である「Ground Impact 2015」で戦うことができ、そしてアダルト最後の試合で勝利することが出来ました。この試合は1番印象に残っています。

※試合後のインタビュー(mmaplanet)

もう一人は生田誠さんです。

2011年に3回対戦して1度も勝てなかったです。2017年にサブオンリールールで戦ってその時は引き分けに終わっています。生田さんとはいつかまた試合したいですね。

生田誠さんとリング上での試合

SNSやYoutubeなどでも語られていましたが、吉岡大さんからはどの様な影響がありましたか?

私が紫帯の時に初めて吉岡さんがポゴナに来られ、それ以来8年間位稽古をつけてもらいました。練習での強さは神がかっていて、1度も完パス出来たことはありませんでした。それ以外にも練習に挑む姿勢等、多大な影響を受けました。

詳しくはYoutubeに

金古さんと言えばディティールまで物凄く体系化されているテクニックが有名ですが、柔術にテクニックはどれほど重要でしょうか?

テクニックは重要ですよ。確かにフィジカルも大切です。

私は多くの柔術家を見てきましたが、その中で勿体ないなと思うパターンの人が一定数います。

それはフィジカルが強い人がスパーリング重視の練習で勝てるからといって、あまりテクニックを学ぼうとしないような人です。

紫帯位までは結構それで勝てたりしますが、茶帯位で壁にぶつかります。そこでテクニックの重要性に気付いても、今までのフィジカルスタイルからなかなか抜け出せず、面白くなくなって辞めていく、という人を何人か見てきました。

先を見据えるのであれば、早い段階でテクニックを重視した練習に切り替えるべきだと思います。

※金古さんの超絶テクニックは「シュラプネルオンライン」にて!

現在ではご自身の道場「シュラプネル柔術」を立ち上げられていますが、どの様なコンセプトでしょうか?

先程の話にも繋がってくるのですが、とにかく私はテクニックの習得を重視した練習をしてもらえるよう普段から指導しています。

東京都内ではしっかりクラス分けがされていて、細やかにテクニックを教える柔術専門道場がたくさんありますが、埼玉は今でもスパーリング中心の道場が多い気がします。

なので私自身はシュラプネルを「埼玉で1番テクニックを分かりやすく細やかに教える道場」という意識で運営しています。

シュラプネル柔術アカデミー「柔術で大人の余裕を勝ち取れ!」
さいたま市中浦和とさいたま市大宮の2箇所で金古一朗が直接指導!
https://shrapnel-bjj.com

最後に金古さんにとって格闘技とは何ですか?

一言で言うと「楽しい娯楽」ですかね(笑)
一生飽きずに体が動く限りは楽しめそうです♪

インタビュー後記

実は金古さん、格闘技を始めた当初はフィジカルを前面に押し出したパワーファイターだったらしい。それを見かねた当時のジム代表に「パワーに頼りすぎだから技を覚えるために柔術をやった方が良い」と言われ柔術を始めたそうだ(当時を知る関係者談)。

柔術を始めてからは一転、本やDVDを観ながらテクニックを猛練習。仲間やライバル達の刺激もあり飛躍的にレベルアップされたとのこと。テクニックに自他共に厳しい渡辺翔平選手が「金古さんは凄い」「金古さんとの練習は楽しい」というのもうなづける。

その様な日本のブラジリアン柔術第一人者にお話を聞けたのは大きな勉強になった。特に「スパーリング重視の練習でテクニックを学ぼうとしない人」の話は非常に耳が痛い・・・。実際私も今までの練習ではこれ以上の帯になるのは難しいだろう(スクランブル攻防のドサクサと運で紫帯まで来た、金古さんが語る典型的なダメ例)。

そんな自戒にもなった貴重なインタビューだった。

金古さんのご協力に深く感謝します。

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