ブラジリアン柔術の世界でもコロナウィルスの影響は大きい。続々と国内外の大会が中止に追い込まれる中、5月にロサンゼルスで開催予定だった柔術世界選手権(通称ムンジアル)も中止が決まった。

その大会に日本から最高峰の黒帯カテゴリーに出場が決まっていたのが渡辺翔平である。実はムンジアル黒帯の出場ハードルは高い。世界中で行われる国際大会で勝ち、出場に必要なポイントを満たす必要があるのだ。出るまでも険しく、そして本番では世界中の怪物たちと相対する事になる。

そんな険しい出場権を獲得し、ムンジアルで勝つための練習に日々明け暮れてきた渡辺翔平に話を聞いた。

※現役選手は一部敬称を省略させていただきます。ご了承ください。

プロフィール

渡辺 翔平(わたなべ しょうへい)
栃木県出身/埼玉県川口市ポゴナクラブジム所属
ブラジリアン柔術黒帯/ルースター級
中学の頃より強さへの強い憧れを持ち、地元で仲間や弟たちと私的な格闘技の練習を始める。初めはMMAと並行していたが、現在はブラジリアン柔術に専念。柔術界では弟の直哉と共に渡辺兄弟として名を馳せる。趣味は幽遊白書を観ることと柔術動画を観ること。最近ではセミナーやプライベートレッスンも受け付けている(受付は各種SNSやDMから)。

SNSアカウント・関連サイト

主な実績

― 茶帯時代

  • 2015年:IBJJF アジア選手権 優勝
  • 2016年:JJFJ 全日本選手権 優勝
  • 2017年:JBJJF 全日本選手権 優勝
  • 2017年:今成正和より黒帯授与

― 黒帯時代

  • 2018年:IBJJF アジア選手権 準優勝
  • 2018年:IBJJF パンパシフィック選手権 優勝
  • 2019年:IBJJF 東京国際チャンピオンシップ 優勝
  • 2019年:IBJJF アジア選手権 準優勝
  • 2020年:IBJJF 世界選手権 出場

インタビュー

コロナの影響により出場予定だった柔術世界選手権(ムンジアル)が無くなりました。今の率直な心境を教えてください。

そうですね。3月のパンナムが中止なった時点で6月のムンジアルも厳しいかなとは思ってましたが、以外と延期の発表も早かったのでモチベーションが落ちる事も特になかったですね。それ以降も変わらず練習をしています。ただ、最近コロナの影響で練習場所や練習相手がかなり制限されているのは辛いです。

昨年のムンジアルでは結果的に優勝するマイキー・ムスメシと戦いました。世界のTOPと戦ってどう感じましたか?

うん・・・色々と葛藤を感じました。
マイキーや橋本知之選手は明らかに自分より技術的に優れている。それが分かっているから「勝ってやろう」という気が沸きづらいんんですよね。

マイキーと対戦したり(橋本選手と)毎回練習していて思うのは、あんなに優れているなら優勝して欲しい、という感情にもなってしまいます。それくらい自分とは差があると思っています。

マイキーも橋本選手も直近のヨーロッパ選手権で優勝してますし。

− トーナメントを制するマイキーと初戦で対戦

ちなみに一緒にムンジアルに遠征した草柔会の後藤琢磨選手はMMAに挑戦・・・との話も出ていますが渡辺選手はどうですかw?

MMAは、、、ないです(笑)。

私から見ていても強くなる事への執念と努力を感じますが、日々どの様に柔術に取り組んでいますか?

やっぱりやるなら誰よりも上手くなりたいと思ってやっていますから。

「上手くなりたい」を突き詰めた結果がそういった習慣になってる感じなので、特別な努力とかそういうんじゃなく無我夢中になってるだけだと思いますよ。

影響を受ける選手はいますか?

練習仲間には常に影響は受けてますよ。その中でもダントツで橋本知之選手には影響されてますね。ほんとやばい。

− 橋本知之選手とは定期的練習をする

家からジムまでずいぶんと遠いと聞きました。

実家から練習拠点のポゴナクラブジムまでは車で片道2時間かけて通っています。でもまあ、打ち込みもフィジカルトレーニングもどこでも出来るし、僕は良い選手と、決まった場所と曜日に、決まった時間、スパーをやれたら大満足なんですよね。

でも昔はもっと練習してたので週の半分はジムに寝泊りしたりとか、車中泊とかしてましたけど(笑)。

いつも弟さんと練習をしているようですね。橋本知之選手もそうですが兄弟で練習することはどの様なアドバンテージがありますか?

単純に打ち込み相手は毎日同じ人が良いと思ってます。弟とは毎日打ち込みを1時間以上はやってるし、お互いの理解度も同じぐらいだし「昨日の続きから」とか…みたいな感じになります。

その間にもくだらない話しをしてるし、気を使わずいつでも気楽に練習出来ることは大きなアドバンテージになるんじゃないですかね。

昨年よりプライベートレッスンやセミナーを始めたと聞きました。翔平選手のレッスンでの売りをズバリ教えてください。

うん…本当は学校の先生みたく、毎日何十人もの前で授業とかは苦手なんですよね。自分の練習にも支障が出てしまう時もあるし、塾の先生みたいなスタンスで生徒さんと向き合うのが1番良いかぁと思ってるんですよ。

− 2019年 名古屋ブラジリアンジェントルアーツで行われたセミナーにて

セミナーもレッスンも僕を選んでくれてお金を払って受講する訳だし「ここが知りたい」とかそういう目的で来る人が多いし、その結果リミッターになってくれる生徒さんも居るから。僕はそういう感じでテクニックを伝えて行く方が良いんですよ。

柔術の話はもう良いとして好きな女性のタイプを教えてください。なんなら芸能人でも良いですよ!

恥ずかしいから内緒!聞いてる人の方がよく知ってるでしょ(笑)!

最後に今後の予定や展望をお願いします。

試合の事は分からないですけど常に成長を感じる為に、成果と課題を突き詰める事です。今世界がこんな状況でも練習してる人は絶対いるし、どんな状況でも成長し続けられる選手は沢山いると思うし、そのような選手はより効率良く練習していると思う。

だから自分も良いお手本をマネしてこれからも沢山の事に気づいて柔術に向き合いですね。

インタビュー後記

渡辺翔平は一見近寄り難い。坊主頭で髭面、道着を着ると修行僧のようにも見える。実際に柔術に関しては自分にも人にも厳しく、時に常人にはあまり理解できない競技論や辛辣な意見も吐く。今回も茶化した質問を連発する私に何度もクレームを入れてきた(笑)。それだけ柔術へ真剣なのだろう。

しかしながら柔術を離れた素顔は、少しシャイで人並みにふざけた話が好きな青年である。

「幽☆遊☆白書おもしろいよね!」それだけで饒舌になる事だろう。

渡辺選手のご協力に深く感謝します。

投稿者 蓑毛 新 

マーケター兼ライター。ブラジリアン柔術紫帯でMMAも少し嗜んでいます。好きな格闘家はアントニオ猪木。好きな食べ物はイクラとラーメン。 お問い合わせ、各種ご依頼はお問い合わせページよりお願い致します。