三重県度会郡を本拠地とし、試合の度に日本全国を東奔西走。

JBJJF(日本ブラジリアン柔術連盟)の2019年間ランキング一位に輝いた堀内さん。今年1月には黒帯に昇格した「三重の小さな巨人」である。

都市部に比べ決して練習環境が充実しているとは言い難い中で、パワフルに活躍を続ける堀内さんに話を聞いた。

インタビュー

まずはJBJJF年間ランキング「男子マスター1~2茶帯の部」一位、そして黒帯おめでとうございます!

ありがとうございます。

なんとか頑張ってランキング1位を取る事が出来ました。今年3月1日の全日本マスター選手権に合わせて表彰式がある予定だったのですが、コロナ騒動で延期になってしまったのが残念です。

全日本マスター自体も黒帯での初めての試合になるはずでしたが、黒帯での初試合は当分お預けになりそうです。

− 2019年1月黒帯に昇格

そもそも柔術を始めたきっかけは何ですか?

小さい時から何か格闘技や武道をしたいなと思っていたのですが、三重の田舎なので近くにそのような道場はありませんでした。

高校進学の時に実家を出て祖父母の家から通うことになり、そこの近くに合気道を教えてる道場があったのでそこに入会しました。柔術を始めるまでそこで10年程合気道をしていました。

20代半ばのPRIDE全盛期だった時に、合気道仲間の格闘技好き数人でグローブとヘッドガード買って総合格闘技の真似事をしていたのですが、もっとちゃんとした技術を知りたいと思いネットで調べていたら、伊勢に柔術兄弟がある事を知り、代表の松本さんに連絡をとって入会しました。

入会したのが2006年末位で、その当時柔術兄弟に2009年修斗フライ級新人王になったろん選手が所属していたので、練習は修斗ルールに沿った内容でした。「柔術」兄弟なのにほぼテイクダウン有りの打撃スパーとグラップリングという感じだったので、入会した当初は柔術の試合以外にもアマチュア修斗にも出たりしていました。

柔術に専念しだしたのは、ろん選手が引退した後に道着有りの練習が増えて2012年に青帯になった頃くらいからです。

その頃、Rollの前身だった志摩ブラジリアン柔術の代表だった中村さんが指導に来てくださっており、現Roll代表の尾崎君も同行して練習に来てくれていました。

一緒に練習して行くうちにドンドン柔術にのめり込んでいき、セミナーに多数参加する様になったり、大会遠征も頻繁にするようになって現在に至ります。

このコロナの状況で練習も難しいと思いますが、普段はどのような環境で練習をされていますか?

月金と柔術兄弟の柔術クラス参加して、水木は志摩市のRoll jiujitsu studioに出稽古に行き、日曜は津市にあるKekoa  collective JPのオープンマットに行っています。多い時は週5練習していますね。練習場所はどこも自宅から車で往復2時間かかる所なので少ししんどいです。

柔術兄弟ではほぼ70kg以上の方ばかりなので追い込んだ練習できますし、Rollのメンバーもみんな強く、特に代表の尾崎君は研究熱心で最新テクニックに造詣が深く常に良い刺激を受けています。また、Kekoaでは色んな道場の方が参加していて良い交流ができています。

− 盟友 Roll尾崎代表と

現在、コロナの影響で全く柔術出来てない状態です。今はランニングしたりウェイトをするぐらいなので、早く終息して柔術が出来る環境に戻るのを心待ちにしています。

日本中を東西へ、尋常でないペースで試合に出場されています。何が堀内さんを突き動かすのでしょうか?

2018年にマスターのランキングが作られた時に、何かのタイミングでランキング1位になった瞬間がありました。

その時に「もしかして良い順位にいけるんじゃないかな?」と思っていたのですが、その年は特にランキングは意識せずに試合で続けた結果4位でした。

2019年は全日本マスター選手権と西日本マスター選手権を優勝し、ランキング見たら1位になってたので「去年ランキングを意識せずに試合してて4位だったのなら、大会参加数増やしたら1位になれるんじゃないか」と思い、5月からランキングポイントを取るように意識して試合に出ていました。

ランキング1位を獲りたいと思ったのはトライフォースの佐藤さんの影響が大きいと思います。

初対戦した2016年から2018年まで同じ帯のカテゴリでしたが、ずっと佐藤さんがランキング1位でしたから。負けないぞ、という対抗意識はあったと思います。

その結果2019年は16大会参加しました。遠征先は大阪、名古屋、東京、横浜でしたが、ポイントが抜かれる可能性や、マスター1〜2にエントリーがあれば福岡や北海道にも試合に行こうと考えてました。

(2019全日本マスター↓)

今までに印象に残っている試合を教えてください。

一本取られたり大差で負けた試合の方がやっぱり悔しいんで記憶には残りますね。

去年だと、アジア選手権の決勝で当たったポイント取られまくったデラヒーバジャパンの北山さんとの試合や、一本取られたブレイブハートの高橋さんとの試合ですね。

トライフォースの佐藤智彦選手とは熱戦を繰り広げてこられたイメージですが、もう勝負はつきましたか?笑

佐藤さんとは紫帯の頃から対戦し始めて、戦績は5戦1勝4敗で負け越してますので、佐藤さんの方が僕より格上だと思っています。僕が負けた相手にも佐藤さんは勝っていますし。

また対戦する時はチャレンジャーとして胸を借りたいと思います。

堀内さんは様々な選手のセミナーでお見かけする印象です。特にお気に入りの選手や参考にする選手はおられますか?

やはりルースター級なので、同じ階級の日本のトップ選手である橋本知之選手や芝本幸司選手の動画などはよく見ていますし、セミナーがあれば参加させていただいています。

トップからのパスだと脇差しパスをよく使うので杉江アマゾン選手、嶋田裕太選手、岩崎正寛選手。ボトムからだとディープハーフをよく使うので岩崎正寛選手の動画など参考にさせていただいています。

僕がセミナーに頻繁に参加するのは、地方の道場で指導してもらえる先生がいないからというのが大きいです。

ろん選手が引退されて道場で僕が1番古株になってしまい、テクニックなどはDVDやYouTubeで勉強するという感じなので、指導してもらいたいという欲求が強いのだと思います。

セミナーに参加して色んな道場の方達と交流するのが楽しい、ということもありますが。

− 岩崎正寛選手セミナーにて

− 細川顕選手セミナーにて

− 橋本知之選手セミナーにて

「修羅の国」といわれる黒帯の世界に足を踏み入れました。黒帯で意識する選手や対戦したい選手はいますか?

このコロナの影響でまだ黒帯での試合を経験出来ていませんが、強さの上限のない黒帯で自分一番最弱だと思っています。

その様なことを言うのはおこがましいと思いますので、発言する実力を見につけられる様に日々精進したいと思います。

では堀内さんにとってブラジリアン柔術とは何ですか?

なくてはならないものでしょうか?

すごく楽しくてポジティブな感情になれるのも柔術だし、悩んで凹んでネガティブな感覚になってしまうのも柔術です。

柔術をしてなかったらどうしてるだろうと考えると怖いです。基本ネクラな人間なので、仕事以外は引きこもってしまう不健康な生活をおくっていたかもしれません。

柔術をしているから色々な所に行き行動範囲も広がり、柔術を通じて様々な人と出会って知り合ったりと柔術が現在の状況を作るキーになっており、自分の人生にとって非常に重要なものになっています。

柔術をしていなかったら、非常につまらない今よりも狭い世界で過ごしていたと思います。柔術と出会って本当に良かったと思っています。

最後に今後の目標を教えてください。

当面の目標は黒帯での1勝です。

そしていつかは、自分の年齢カテゴリーでの全日本マスターとアジア選手権での優勝です。その上でワールドマスターにも出てみたいです。

それとコロナの影響でオープンが未定になってしまいましたが、今年伊勢でオープン予定のジム「WELL‘S(ウェルズ)」でRollの尾崎君と一緒に柔術の指導も行う予定ですので、そこを上手く軌道にのせてもっと柔術の知名度を上げて行きたいですね。

インタビュー後記

私と堀内さんは同年代である。それもあり精力な堀内さんには以前より注目していた。いつか詳しく話を聞きたい、それが叶った今回の機会である。

話を聞いて驚いたのは、癒し系の外見からは分からなかった気持ちの強さだった。決して恵まれた練習環境ではない中での継続、ランキング一位への執念、ライバルへの意識、さらなる野心。しかも以前はMMAの試合にまで出られていたとは!驚

まさに「三重の小さな巨人」。練習環境に劣る地方の皆さんの希望にもなるのではないだろうか(移動のしすぎ?で車が壊れたとも聞いたがw)。同年代として私も深く自戒したい…。

堀内さんのご協力に深く感謝します。

投稿者 蓑毛 新 

マーケター兼ライター。ブラジリアン柔術紫帯でMMAも少し嗜んでいます。好きな格闘家はアントニオ猪木。好きな食べ物はイクラとラーメン。 お問い合わせ、各種ご依頼はお問い合わせページよりお願い致します。